ウォール街のプロからの公開書簡:現役アクティブ・ファンドマネージャーの皆様へ

短期的な株価の上下はあったとしても、テスラ株はバブルではありません。 

 

S&P 500をベンチマークとしているファンドマネージャーの皆さんへ

 

テスラはS&P 500指数に12月18日の終値でおよそ1.5%の比率で組み入れられます。S&P 500指数の中では、6番目の時価総額になります。

 

GSによると、皆さんのファンドのうち90%は、現状ではテスラ株を保有していません。またバリューを重視する皆さんは、テスラ株に興味を抱いたこともほとんどなかったことでしょう。

 

テスラは年初来で665%も上昇し、コンセンサスEPS予想の169倍ものPEで取引されているのですから、それも当然のことです。

 

皆さんには、この株価上昇をやりすごして、株価が地上まで墜落してくるのを待つという選択肢だってあります。

 

しかしそれは大きな間違いだと申し上げたい。

 

 CNBCに出てくるような解説者は、テスラのこと何も調べもせず「割高だ」と喧伝します。

 

ロングショート系の有名人(ジム・チェノス、デイビッド・アイホーンなど)や、セルサイドのアナリストは、当然のことのようにテスラを既存の自動車メーカーと比較します。しかし彼らのテスラについての見通しは、何年ものあいだ、ずっと間違ってきたのです。

 

自分のことをスマートだと思っている彼らが、テスラ株の上昇し続ける理由について述べるのを聞くと、中身のない空っぽな意見だと私は感じます(ロビンフッダーによる投機的な買い上りに過ぎない!などなど)。

 

なぜテスラが上昇し続けるのか、そして2021年もさらに倍増しうる可能性を持っているのか、私がその理由をお教えしましょう。

 

(もし皆さんが、ベンチマーク上で1.5%のウエイトを占める株が1年で2倍になるのを逃したとしたら、150ベーシスのパフォーマンスを犠牲にすることになるのですから!)

 

まず初めに、

EVは今後急速にガソリン車に置き換わっていきます。

現状ではEVのグローバルでのSAARは3%に過ぎませんが、これが急拡大していきます。

 

アップルの iPhone を手にした時のように、一度でもEVに乗ってしまえば、顧客はもうガソリン車に戻ることはありません。

 

その結果2025年までに、EVのSAARは、グローバルで20%に達することでしょう。

 

ここで簡単な算数をしてみますと、

 

20/3 = 6.7x = 46% CAGR.

 

つまりEVは年率46%で急成長する市場なのです。

 

次に、テスラはグローバルなEV市場において、すでに圧倒的なリーダーです。

今年のグローバルでのシェアは25%に達します。

これだけ競合がいる中でテスラのシェアは減るどころか拡大し続けているのです。

 

(中国では100以上のEVメーカーがあるとされていますが、その中国においてさえテスラのシェアは減るどころか拡大しています。成長する市場でシェアが拡大!)

 

またテスラのTAMも上昇し続けています。モデルYがクロスオーバー市場に投入されたことで、テスラのUS市場における TAM は 24% から 65%まで上昇しました。サイバートラックが発売されればTAMは 86%まで上昇します。

 

アップルの iPhoneと同じように、内燃機関メーカーのブランドが作るEVが、ブランド力でテスラのEVの競合となることはありません。

 

また彼らの作るEVは、バッテリー航続距離、パワフルさ、FSDやソフトウェア、バッテリーも含めた製造コストにおいてもテスラの競合とはなりません。

 

また内燃機関メーカーというブランドは今後急速に色あせていきます。

 

 

 

 

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さらに12月15日の終値をベースに、テスラのバリュエーションを考えてみます。

 

上述の「自分をスマートだと思っている人々」のほとんどがここで本筋を見誤ってしまいます。 

 

テスラの販売台数とEPSが、今後年率50%で成長していくときに、既存の内燃機関メーカーに与えられている8~10倍のPEを、テスラにも与えるファンドマネージャーはいないでしょう。

 

既存の内燃機関メーカーと、世界最高の純粋なEVメーカー(世界最高のFSD、バッテリー技術、BMS)とを同列に比べることはできません。

 

私の2022年の予想EPSを見てみれば、PEは67倍です。

 

ゲーリーさんの数字は、ロボタクシーとか、エネルギー事業の拡大、保険事業の拡大とかはカウントされてないもので、テスラブルの中では控えめな数字です。販売台数も年率50%増というのも3つのギガファクトリー(上海、ベルリン、オースティン)のフル稼働を考えれば控えめな数字です)

 

これはPEGレシオで見れば、1.3倍に過ぎません。

 

2023年の予想EPSを見てみれば、PEはたった43倍です。

 

PEGは1倍を下回ります。

 

 

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これを他のメガキャップ・グロース株と比較してみます。上述のようにテスラが年率50%成長するならば、テスラのPEGは1.3倍に過ぎません。

  

この中でテスラよりも割安なPEGを与えられているのは、フェイスブックだけです。 

 

アマゾンとグーグルはテスラと同じPEGを与えられていますが、成長率はずっと低いです。

 

ラッセル1000グロース指数は、2倍のPEGを与えられています。

 

S&P 500指数に至っては、3倍ものPEGが与えられています。

 

テスラが割高ならば、AAPL, NVDA, PYPL, LULUなどなど、これらはみな超割高です。

 

ではテスラの株価はどれくらいが妥当なのでしょうか?

 

2025年にEVのシェアが20%として、テスラが現状と同じ25%のシェアを実現するとしましょう。また廉価モデルの発売により、平均販売価格は下がると予想し、排出権によるクレジット収益はゼロとして考えてみます。

 

わたしの予想では 2025年の EPSは $24ドルです。

ここでPEを50倍(PEGは2倍を想定、すなわちEPSGは25%を想定)とするならば株価は1,200ドルとなります。

 

( PE 50=2×25 もしくは PEG 2=50÷25)

(PE=PEG×EPSG もしくは PEG=PE÷EPSG)

(PEG2倍は成長株では十分正当化される。)

 

(DCFではなくDDMを、PSRではなくPEを使うことは議論の余地がありますが、わたしはゲーリーさんの手法の方が100倍マシだと思います。PSR(4x)とか壮大なジョークだと思います。)

 

テスラのディスカウントレートは9.5%近辺なので、現状の理論株価は830ドルが妥当だと考えます。

 

もし2025年に現状と同じEPS成長を実現しているならば、PEGを2倍とすれば、理論株価はさらに倍増します。

 

現時点(12月15日)から12月18日のクローズまで、 S&Pインデックスファンドは、テスラ買いその他売りモードになる可能性が高いです。

 

そこでベンチマーカーの皆さんも同じことをされてはいかがでしょう。

 

ご自身のファンドの1.5%をテスラ株とすれば、ベンチマークに劣る心配をすることなく、夜もぐっすり眠ることができるのですから。