ウォール街のプロが教える理論株価の算出方法: by Gary Black

以下は全て四則演算しかでてこないので、計算で難しいことは何もありません。

割り算したものを足し合わせてるだけです。

このモデルにインプットする変数は

・今年度のEPS

・EPS成長率(次の5年間)

・配当の支払い比率

(もし配当を出すのなら必要だが、テスラなどのグロースにはあてはまらない)

 ・米10年債利回り(リスクフリーレートとして)

・株式リスクプレミアム(株式市場というリスクをとることへのリターン)

・ベータ(その株式のボラティリティみたいなもの)

・5年後以降のEPS成長率

↓ 

テスラの、5年間の業績予想に基づく現在価値(PV=present value)を見積もってみます。

5年間ではなく、10年間、20年間の業績予想を使う人もいます。

テスラのプライスターゲット(PT)は、6~12か月の間に達成されるであろう目標株価のことです。

算術的には、予想株価は、「今後の配当の現在価値」と「五年後の将来の株価を現在価値に割り引いたもの」です。割引に使うのは、テスラの資本コストです。

資本コストはWACCのことです。

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テスラは配当しないので、2025年の株価のみが問題となります。

(つまり式の前半の項は全く無視するということ)

これは5年後のPERと5年後のEPSによって求めます。

割引率は、リスクフリーレーと(米10年債利回り)と「株式リスクプレミアム(6%)にテスラのβをかけたもの」を足し合わせて求めます。

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 今後6ヵ月~12か月のテスラの目標株価は600ドルです。

 (この後ブラックさんは、Q3決算発表を受けて750ドルに引き上げている!)

インプット

2025年時点の株価の予測前提 

・PER 50 倍

  ・PEGレシオ2倍

  ・2025~2030年のEPS成長率25%

50 = 2×25 です。

これはテスラの成長ドライバーが実現した際には控えめな数字です。

・2025年度の予想EPS 18ドル

 (Q3決算後に 18→21 ドルに引き上げられています)

18×50=900

900ドルがブラックさんの考える2025年時点の目標株価です。

高成長企業の場合、PEGレシオ2倍は正当化されるので、5年後の予想EPS、その後のEPS成長率を見積もるのかキーポイントです。 

 

これを現在の価値に直してあげるのですが、そのときにつかう割引率は上述の資本コストです。

資本コスト=割引率=9.7%=0.8%+1.45×6%

 

これは理論的背景はモダン・ポートフォリオ理論ですが、計算上はいたって簡単です。

0.8%=米10年債利回り

1.45=株式β=市場平均が1%動いたときにテスラがどれだけ動くか。

6%=株式リスクプレミアム

  =現在の10年債利回りを見つつも、株式投資したらこれくらいのリターンは欲しいよね。

で900ドルを1.097で4.25回割ると(4年と1クォーター分割り引く)、およそ600ドルというプライスターゲットがでてきます。

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もしテスラが今後の決算で、アナリスト予想を上回るEPS成長を出してきたら、将来のEPSが上方修正される。

それに従って、目標株価も上方修正される。

またその成長の加速が続くと思われたなら(さらなる高PERの正当化)、インプットの値が上ブレるので、モデルに従って目標株価は上昇する。

ただし、計算に際して、訴訟利益とか繰り返し発生しない利益は除外される。

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出荷台数増、出荷に影響しない値上げ、マージン拡大がアナリスト予想を上ると投資家が考えれば、決算前に株価は上昇する

出荷台数はグローバルでの、SAAR、EVの浸透率、その中でのテスラのシェアから計算される

また決算前に買い上がる投資家は、はしばしば好決算で売りにまわることがある

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今の株価が安いのかどうか判断するためには、つねに「現在価値」と比べなければならない。

 

ただしもっと簡便にPERを割安の指標とする人もいる。

その場合は、予想PERと5年間にわたるEPS成長率とを比べる。

(つまりPEGレシオを見て割安かどうか判断するということ)

 

 PEGレシオ=予想PER/EPS成長率

 

成長株に関してはこの

PEGレシオが2を下回れば割安と考えてよい

とされている。

 このPERの上昇(マルチプルエキスパンション)を引き起こす3つの要因は以下となっている

 

①売上成長、利益成長、TAMの拡大、マーケットシェアの上昇

 →EPSが上昇するから(Q3の好決算はコレ)

②利子率の低下

 →割引率が低下するから(FEDの緩和はコレ)

③βの低下

 →割引率が低下するから(S&P500採用による今後のボラの低下はコレ)

 

これは割引配当モデル(DDM)といわれるもので、利益をベースにしたモデルです。キャシュフローの分析ではないので、M&Aなどの企業価値算定には使えません。

しかし、DCFなどのキャッシュフロー分析は変数がさらに増えるので、いかなる結論も自由自在に導くことができるので、結局株式投資には使い物になりません。

株式投資の実用上はDDMで十分だと思います。

もしくは成長株に関してはPEGレシオだけでもいいと思います。

さらにこだわりたい場合は、5年後のEPS予想を精緻化するほうが御利益が大きいと思います。